トランプ大統領になって

当選確定直後にわたしの友人が「あんなやつが核のボタンを押せることになるのか」と言っていたけれど、それはともかく彼の「アメリカのために」という方針は判りやすくていいなと思った。先進諸国はおしなべてグローバル化へ向かっているようだけど、どこの国にもある「自国の利益の優先」が、こと日本に限っては見落とされているというか、他国のポリシーに揉まれることが生きる試練だと思い込んでいるように見えるときがあるし、日本の持つ文化の良い面も、外国に褒めてもらわないことには納得しないように見えるから。

トランプは、よく言えばビジネスマンだから損得で考えていくと思う。悪く言えば成り上がり社長だからなんでもカネで解決しそうで、ロシアとも裏で手を握りそう。だから、安倍首相のような金持ち坊ちゃんが渡り合うのは無理だろうな。私もああいうの無理、好かれるタイプだけど(笑)。
90年代のはじめごろ雑誌ブルータスか何かで、ニューヨークへ行くと豪華絢爛なトランプタワーがあると美しい写真で紹介されていたのを読んだ。成功すればこんな人生があるのが“アメリカンドリーム”さ、みたいな内容だったと思う。記事に本人は登場しておらず、てっきりウッディ・アレンのような容姿の爺さんを想像していたので、一連の選挙活動に登場した姿をみて「えっ、まだ生きてるんだ」と驚き、そしてあのオレンジ色の顔を見て驚いた。ああいう、キャバクラで豪遊して全部会社の経費で落としているような、ザ・たたき上げみたいなおっさんはまだ日本にもいっぱいいるぞ。あんなのが世界のトップに立てるなんて、アメリカも終わったのか、世界が変わったのか。オバマ前大統領の最後のスピーチはとてもよかった。政治は理想を語るべきだとおもうから残念だけど、立派すぎたんだろうな。今度は心にもないお愛想がシレッと言える人なんだから真に受けないようにしないと。

小池百合子の「都民ファースト」はまだ真贋怪しく自分の欲にすり替えられそうだが、トランプ大統領はきっとカネに困っていない分、本当にアメリカの得になると思うことへ突き進む。私はアメリカンファーストだと聞いて、いいなと思った。日本もそうさせてもらうよと言って交渉すればいいと思うし、話し合いは割り切って取引条件の整理ぐらいのスタンスでやるのはどうだろうか。米国や世界のあるべき姿なんて日本が考えることじゃない。トランプが雇用を増やすと製造業に注目していることがさらにいいことだ。個別の業界への影響はともかくとして、モノづくりこそ日本の得意技ではないだろうか。創造と製作に関わる仕事をしてる身としては、そこに論点が絞られるのはメリットもあると思う。ちょっと働いたぐらいですぐバカンスしたがるあいつらに良いモノなんか作れるはずがない。そもそも日本も海の向こうで作ってるものを当たり前に食べ過ぎる。どこの国の誰が作ってるのか知らないものは怪しんでいいし、日本で作られているものは安心と思うことは、なかば盲目的であったとしても、あっていいのだ。その信頼に応えることが製造者の矜持であり日本の国民性なのだと改めて自覚するいい機会になればいいと思う。

20年ほど前にお世話になった会社の社長もザ・たたき上げだった。見た目には貧相でヒステリーだったけれど、かなり社業は伸ばしていたし、そこそこ有名にしていた。そして稼ぐ人が好きだったし、わたしも気に入られて一時そこの役員にまでなった(登記は確認していないけど)。その社長が話したビジネス観の一言は今でも覚えている。「ドメインがどこか、それが非常に重要なんです」。企業のHPもロクにない時代だったから「ドメイン」の意味がピンとこなくて辞書をひいた。そして、分野・領域のようなものを意識することが大事だと理解したことを漠然と覚えている。立ち位置、大事だと思う。いまだからこそ特に。

(飯島)