文章を書く商売を成り立たせるために

ブログを始めてから10年ぐらい経った。始めたのは会社を経営するようになったから。生意気にも社長ブログである。かつて売り込みのライターを断ったら逆恨みされて、夜な夜な嫌がらせのFAXが来たことがあるが、そんなさえないオッサンに言われるまでもなく社員が一人や二人の会社で、何が社長だ、偉そうにと、自分のことを思っていた。私の発言に興味がある人なんか居ないから、形は作ったけど何を書けばいいのか困った。困りながら10年経った。

仕事に関することは、どんな些細なことでも納品(公表)になるまでしゃべれない。いきおい、当たり障りないネタしか選べない。誰に向かうわけでもなく書くので、書いててつまらないし、自分で読み返してもつまらない。ただし小さい会社だから社員の確保には常に困った。それはいまも変わらない。なので、社員の心得とまではいかないけれど、この業界に足を突っ込む人への覚悟みたいなもの、そういうことを想像できるような記事だけは、目的をもって定期的に、割と一生懸命に書いてきたと思う。

制作業に身をおくものとして、人材育成は常に課題。
なのに、最近の電通への評価や、DeNAの記者会見には失望通り越して絶望すら感じる。

二年ぐらい前、キュレーションサイトの記事を書いているというライターの売り込みに対応したことがある。聞いてびっくり、だ。
「納期は大概一晩です。営業さんやディレクターさんから夕方メールが来て「○○をテーマに10本書いて。明日の朝までね」といわれて書くんです。ネットで検索しながら情報を調べて。いいなと思うものを。文字数?制限がないので数えたことないですけど。一本4000字ぐらいですかね。テキストで送るか、サイトの投稿画面に直接入力して納品になることもあります。ギャラは、一本500円とかですけど、頑張れば一晩で20本ぐらい書けるときもあるんで。それだと1万円ぐらいになりますね」
仕事の流れに検証のプロセスがない。
また昨年、年配のコピーライターへ仕事の相談を持ちかけたら「面白い企画ですが、ウェブはやりません」というそっけない返信がきて、いろいろな意味で驚いた。

仕事の価値を作るのは自分だ。

一晩寝る時間を削って人の書いた文章を焼き直し、もらう一万円を、仕事の実績と呼べるのか。
こうして誰でも、書いた文章をウェブにアップできるのだ。裏を返せば、自分程度の人間が書いた文章をただこねくり回して得られる評価はどんなものか。目くそ鼻くそに気づかずに有り難がると、やがてその程度が似合う人間になる。

やるのも、断るのも、本人の自由だ。
でも、それでいいと思ったら終わりだと思う。

DeNAにも言いたい。あんな大きな会社で、社長が記者会見して頭を下げるぐらいなら、今後は「監修」をつけるといったくだらないおためごかしをやらないで、まともな人材をちゃんとライターとして五年かけて育成するところまでやるべきだ。大手企業が率先して口先だけのことをやり、自分の利益を優先することにあたかも義があるように振る舞うから、若い純真な心は騙される。真面目にやったらバカをみると思う人が増えてしまう。

もはや彼らはIT業ではない、残念だけどあれもクリエイティブ業界に片足を突っ込んできているのだから。他人様の業界を踏み散らかしていいわけがない。

(飯島)